どんなに面倒な衣類でも、やっぱり、着物は素敵なんです。

着物を処分したいと思うまでに、
はじめて着物の袖に通した時のことを思い出してみましょう。

普段着の紬のアンサンブルを実家の母に持たされ、
着方の練習をしているうちに、ときどき着物を着るようになりました。

専業主婦のため、のんびりキレイな着方や帯結びの練習ができるものの、
何度か着直したり、結び直したりするたびに、
忙しい現代人には向かない衣類のような気がしてきます。
慣れれば5分や10分で着られるという人もいますが、
やはり洋服の手軽さにはかないません。

半襟を付けるなど、着替えだけでなく準備にも手間がかかるため、
比較的時間に余裕のある私でも、少々面倒に感じることがあります。
もちろん、その準備や手間を楽しめる余裕があれば問題ないのでしょうが、
それでは日常着にはなりません。
このかかる手間も、着物が手を出しにくい、よそいき着になってしまった原因と感じます。

こんなめんどくさい衣類でも、着物に惹かれるのは、やはり日本人に生まれたせいでしょうか。
着物を持たせてくれた、母の気持ちを無駄にできない、という気持ちもどこかにあるかもしれません。
私が持たされた着物は、いわゆるお嫁入道具で、
母が「準備しよう」と言ってくれた頃には、「いらない」と言ったこともありました。
しかし、今となってはやはり持たせてくれたことに感謝しています。
面倒でたまにしか着ることはありませんが、
それでも袖を通して衿を合わせてみると、「着物はいいな」とごく自然に思います。

今の時点で、着物はめんどくさいものとしか感じられず、全く興味がないという人も、
何かきっかけがあれば、着物の良さを感じ、着てみたいと思うかもしれません。
嫁入り道具として着物を持たされる若い人は、どんどん減っているでしょう。
それでも、嫁に出す親御さんには、1枚ぐらいは持たせてほしいと思います。

結婚式や成人式で、プロに着つけられるだけでは、着物の良さは分かりません。
子供の頃、パジャマのボタンを留めるのに四苦八苦したように、
多くの人が着物を着ることを覚え、着て出かけることが増えれば、
日本はもっと魅力的な国になれると思います。